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子供の頃、お盆になると仏壇の前に飾られていた盆提灯。淡く優しい色合いの秋草の柄に、残暑厳しい夏の夕暮れも少し涼やかに感じられた。夏が終わり、秋が近づくと、近所の小さな神社に灯る提灯の明かりがお祭りへと誘ってくれる。明るい都会の夜とは違い、田舎の夜は暗い。そんな中、ぼうっと灯る提灯の明かりは幽玄で、子供ながらにご先祖様と繋がる特別なものに思えた。
『日本のかたち』(1978) の中に提灯の形を見つけた時、それらがどのように作られているのか興味がわいた。提灯には大きく分けて二種類がある。骨組みとなる竹ひごを頂点から下へ向かって螺旋状に巻いていく「巻骨式」と、竹ひごで一本ずつ作った輪を木型にはめ、等間隔に平行に組んでいく「地貼り式」である。「巻骨式」は製作にかかる時間を大幅に短縮できるため、現在は日本の提灯の約九割がこの方式を採用しているそうだ。一方、「地貼り式」提灯は「巻骨式」より多くの工程を要することもあり、職人の減少も相まって、現在では工房は数えるほどしか残っていない。そのわずかな作り手を訪ねるため、京都へ向かった。
初めて小嶋さんの工房を訪れた時、製作中の提灯を見せていただいた。豊かな曲線を描く提灯の中に複数の骨組みが組まれていることに目が釘付けになった。明治時代に使われていたという木型の側面には、小さな釘が打ち付けられている。そこに竹ひごを引っ掛けることで、提灯の骨組みが形作られていく。釘の位置と骨の配置はすべて計算されており、わずかなずれもない。縁の部分は少し赤黒く光っており、それがまるで柄のように見えた。理由を尋ねると、竹ひごを組んだ後に和紙を貼り、その後、和紙を破かずに剥がしやすくするためなのだという。
不思議な形をした木型は、まるで知恵の輪のように上辺から抜き取られる。直径が小さな上辺からでも抜き取れるように、緩やかな弧を描いた特徴的な形をしている。年季の入ったその木枠に書かれた墨の文字もかすれ、全体がまるで模様のように見えた。そこから着想を得て、この木枠のようなかたちが蛇腹状につづくニットシリーズが生まれた。
緩やかな変形の曲線を描いたドレスたちは、動くたびに不均一に揺れる。しかし、遠くから眺めると、豊かなふくらみを帯びた身体の一部のようにも見える。
実は、提灯自体は綺麗な円を描いているわけではない。上部が張り、下に向かうにつれて尻すぼみになっているものがほとんどだ。その理由は、提灯が「見上げるもの」であるからだという。下から見た時に美しく均整の取れたシンメトリーに見えるように計算されているのだと、職人から教えてもらった。
私が子供の頃から眺めていた美しい曲線を描く提灯たち。それは、先人たちの知恵と歴史の積み重ねの中で生まれたかたちだった。こうして一つのかたちは、長い長い旅路を経て形成される。わたしのかたちが、その旅路を讃えるものになれれば、と願っている。